潮干狩りも要注意?本当はこわい貝の話

潮干狩りも要注意?本当はこわい貝の話

初夏の行楽シーズンともなると、浜辺で潮干狩りを楽しむ人々がニュースやワイドショーなどで報道されます。2020年は残念ながらコロナ禍があり一時封鎖された浜も少なくないと聞きますが、今後コロナの収束に伴い再び夏の風物詩を目にする機会は増えていくでしょう。

さて、今回のテーマは「貝」です。

潮干狩りでとった大量の貝は、おすましにしたり酒蒸しにしたり茹でてサラダにしたり、いろいろな食べ方を楽しめるのがうれしいですよね。ですが、ちょっと気をつけたいことがあります。

それは、貝の毒です。

実は二枚貝の多くは、突然毒性を帯びる可能性があります。過去には貝毒が原因で悲惨な死亡事故まで起こっているほど。貝の毒は実はとても恐ろしいのです。

食中毒事故を防ぐために、今回は貝毒から自分や家族、大切な人たちを守る方法を皆さんに知っていただきたいと思います。

アサリも危険?貝毒とは

潮干狩りで獲れる貝といえば、アサリが代表的でしょうか。スーパーや市場などでも当たり前のように流通している貝ですから、家庭の食卓にあがるのも珍しくはないはず。実はこのアサリも、毒性を持つ可能性がある貝の一つです。

そもそも貝毒とはどういうものかというと、貝がもともと持っている毒というわけではありません。貝は海中のプランクトンを食べて生きています。毒性を持つプランクトンが大量発生した場合、それをたくさん食べた貝は中腸線という器官に毒性物質を蓄積します。これを人が摂取することで食中毒事故が起こるわけです。

これらの毒性物質は、加熱しても分解しません。つまり火を入れて調理しても、毒性は消えないということです。

毒性プランクトンが大量発生する原因などについて詳しいことはわかっていませんが、海中の毒性プランクトンが減少すれば、貝の毒性も低下することがわかっています。

貝毒を食べたらどうなる?

貝毒にはいくつかの種類があります。主に下痢性貝毒と麻痺性貝毒、神経性貝毒、記憶喪失性貝毒の四つです。この中でもとくに多いケースが下痢性貝毒と麻痺性貝毒で、農林水産省の貝毒の発生状況によると、2008年から2017年までそれぞれおよそ20件前後で推移しており、2017年時点で麻痺性貝毒の発生件数は35件、下痢性貝毒は7件となっています。

発生件数というのは食中毒事故の発生件数ではなく、監視機関により貝の毒性が確認され、出荷や流通が自主規制された件数です。

下痢性貝毒の症状

下痢性貝毒はほとんどの二枚貝が原因となる可能性があり、食後30分~4時間以内に激しい下痢や吐き気、嘔吐などの症状が表れます。ノロウィルスの症状と似ており、これが致命的になることはほぼありません。症状は三日以内に回復するのが普通です。

麻痺性貝毒の症状

麻痺性貝毒もその多くは二枚貝の中腸線に蓄積しますが、キンシバイの場合は筋肉も毒化するケースがあります。その他マボヤも毒化するケースがあります。

症状はフグ毒による中毒症状に似ており、体のしびれや運動失調等神経障害が現れ、最悪の場合は呼吸麻痺を起こして死に至ります。

1942年にこれら貝毒による事故が静岡県湖西市付近で相次ぎ、334名の患者、144名の死者を出しています。浜名湖アサリ貝毒事件として有名な事件です。

事故を防止する方法

とても危険な貝毒ですが、身近で貝毒による食中毒事故を見たり聞いたりする機会はほとんどありません。なぜでしょうか?

その理由は、市場に流通する貝については農林水産省により毒性のガイドラインが設けられ、厳しく監視されているからです。二枚貝が毒性を帯びる可能性が高い期間、日本全国の漁業関係者が毎週毒性検査を実施しています。規定値以上の貝毒が検出された場合、同種の貝はすべて出荷を停止します。こうしてスーパーや市場などに流通する貝の安全性が守られているのです。

それでは潮干狩りはどうなのか?

公的に開放されている潮干狩り場も同様、貝毒が厳しく監視されています。もし貝毒が検出された場合、会場は封鎖されます。

ですが、個人的に行う潮干狩りとなると話は別です。管理されていない場所あるいは管理者がいない個人的なイベントとして潮干狩りを楽しむ場合、知らないうちに貝毒を持った二枚貝をとって食べてしまう──ということは十分に起こり得ます。

どの貝がどの時期に毒性を持ちやすいかという知識をあらかじめ頭に入れておき、食べたら危険な貝を自分で判断するのもいいですが、管理者不在で無許可の潮干狩りを個人で行うべきではありません。

貝を安全に食べたければ

どうしても自分でとってきた二枚貝を食べたい!というのなら、毒が蓄積する中腸線を除去するといいでしょう。

中腸線は肝臓のような機能を果たす機関で、すべての二枚貝に存在します。ホタテを開くとよくわかりますが、貝柱にヒモ、オレンジ色(または白い)部分(卵巣または精巣)、そして通称ウロと呼ばれる黒い部分があります。このウロが中腸線です。

貝の種類により中腸線の位置がやや異なりますが、一般的には茶色から黒色なので見分けやすいでしょう。この中腸線を破かずきれいに除去すれば、誤って貝毒を摂取してしまうことはありません。

ホッキ貝の中腸線

貝毒はアサリをはじめ、ホタテやムラサキイガイなどほとんどの二枚貝で発生する可能性があります。その中でもとりわけ中腸線の位置がわかりにくいのがホッキ貝(ウバガイ)。

というわけで、ホッキ貝の中腸線の取り除き方を紹介します。

①貝を開く

ホッキ貝の貝柱は左右に二つあります。口の隙間からテーブルナイフをすべり込ませ、左右の貝柱を切断して開いてください。ホッキ貝の貝柱は比較的柔らかいため、簡単に開くことができます。

②身を取り出す

貝柱を切断して身を取り出した状態です。

③解体する

まずヒモを外します。ヒモは手でスルスルと簡単に外すことができます。ヒモの端についている黒い膜を剥がして取り除き、よく洗ったり軽く湯がいたり塩で揉んだりすればヒモをおいしく食べられます。

身の周囲についているヒダ状の薄い膜はすべて除去しましょう。

④貝柱を外す

ホタテ同様、ホッキ貝の貝柱もおいしいので捨てないこと。外して生で食べるのもいいですし、サラダなどに使ってもいいでしょう。

⑤身を開く

いよいよ本体に迫ります。包丁を真ん中から入れ身を開きます。するとその中心よりやや下部に茶色~黒色の箇所が見えます。これがホッキ貝のウロ(中腸線)です。指できれいに外して捨ててください。身も一応流水でよく洗い、水気を拭いてから食べるのがいいでしょう。これでホッキ貝の中腸線除去は完了です。

まとめ

一度口に入れると最悪の場合死に至る可能性すらある恐ろしい貝毒。最後に恐ろしい貝毒から身を守り安全に食事を楽しむためのポイントをおさらいしましょう。

  • 一般販売されている貝を食べる
  • 潮干狩りは公的に開催されているものに参加する
  • 個人的な潮干狩りをしない
  • 二枚貝の中腸線を除去してから食べる

上記四つを意識していれば、貝毒の脅威に脅かされることはまずないでしょう。

海水浴などを楽しんでいると、思いがけず生きた二枚貝を発見してうれしくなることがあります。立派な貝を見つけると「持ち帰って調理してやろうか」などと思いますが、触らぬ神に祟りなし。自然の海原へと返してあげましょうね。

そもそも許可のない個人的な潮干狩りって密漁行為です。余計な誤解を招いたり知らず知らずのうち犯罪行為に手を染めてしまったりしないよう、海のものをむやみやたらにとらないようにしましょう。