長期キャンプにオススメ!簡単にできる干物づくり①
日本の食卓を彩る代表的なおかずの一つである魚の干物。
干すことで魚のうまみがギュッと凝縮した干物のおいしさは、ご飯のおかずにはもちろん酒のおともにも最高です。
干物は市場やスーパーなどで当たり前のように売られていますが、実は意外と簡単に自宅で作れてしまう保存食でもあります。自家製の干物はまさに昔ながらの製法で作る本物の干物で、干物本来のおいしさを存分に楽しめるのが醍醐味。
作り方は本当にシンプルなので、長期キャンプにもオススメ。釣った魚をその場でさばいて干し保存食にする──なんて最高ですね。
今回は魚のさばき方から干物の作り方、作る上で気をつけたいポイントなどをご紹介します。
干物の基本的な作り方
魚の干物の作り方手順は、魚の内臓をとって開き、塩漬けにして干す──というのが基本です。魚や環境などによって微細な個性の違いはあるものの、基本的に「開いて塩漬け後に干す」の原則が干物の共通項なので覚えておいてください。
今回はホッケを使って干物を作ります。
自分で干物を作る場合、魚を選ぶところから始まるわけですが、ここで重要なのが「鮮度のいい魚を使うこと」です。
干物はある程度の時間をかけて作ります。その間、腐りやすい内臓を除去したり塩に漬けたりすることで細菌の繁殖(腐敗)を防ぎますが、もともとの鮮度が悪いと身が傷みやすく、干している最中に腐敗してしまう可能性が高くなってしまうからです。
ですので、まずは「新鮮な魚を使うこと」を最初に意識してください。
新鮮な魚の見分け方は魚によっていろいろありますが、すべての魚に共通していえるのが「目の輝き」と「身の状態」、そして「エラの色」です。
目の輝き
鮮度の高い魚は、目の透明度が高く透き通っています。一般的なスーパーで売られているアジと、市場で売られている新鮮なアジの目を比較してみるのが一番わかりやすいでしょう。前者の場合、目が白く濁っていることが多いですが、後者は透き通っています。ほかの魚においても鮮度が落ちたものは目が濁ってくるので、まずは「目の輝き」を一つの指標として覚えておきましょう。
身の状態
身の状態を見極めるポイントは大きく二つです。一つは「うろこ」、もう一つは「傷」です。
うろこは魚の身を守る鎧のようなもの。これが剥がれ落ちてしまっている魚は、水揚げ時や流通時に魚同士の身が激しくぶつかり合って剥がれている可能性が考えられます。つまり「それだけ身がダメージを受けている可能性が高い」ということ。
魚によってはうろこが非常に剥がれやすいものもあります。たとえばイワシなどはうろこがとても柔らかいので、水揚げ時にほとんどが剥がれてしまいます。裏を返せば、うろこがついた状態で売られているイワシは、良好な管理下にあったと予想できるということでもあります。
またウロコが剥がれた魚は鮮度が落ちやすくなるので、なるべく自然な姿が保たれている美しい魚を選ぶようにしましょう。
「傷」についても同様、魚の身が明らかに割けていたり傷から血が滲んていたりすると、やはり鮮度が落ちやすくなります。身の一部が変色しているものも打撲による内出血で傷んでいる可能性があります。刺身をつくる場合などこうした魚はできるだけ避けるものですが、腐敗との競争である干物づくりにおいてもできるだけ避けた方がベター。
エラの色
エラは魚の呼吸器官です。ここは人の心臓のように血がよく循環しています。魚のエラが赤いのは、血の色が赤いためなのです。エラ本来は白みがかった色をしています。
さて、エラブタを開けてエラをのぞき込んでみると、その魚の状態がわかります。鮮やかな赤色は鮮度に期待できますが、くすんだりドス黒くなったりしているものは、血抜き(魚をしめた後に体からしっかり血を抜く作業)がしっかりされていなかったり、鮮度が落ちたりしている可能性があります。血は、時間がたつとドス黒い色になっていきます。これは人間も同じですね。ですからエラの色が赤黒いのは、それだけエラに血が残っているということ(=血抜きが十分じゃない)、そして死んでから時間がたっている(血が黒く変色するほど時間がたっている)ということなのです。
また、ソイ系の魚などでたまにエラにたくさんの寄生虫が寄生している様子が見られる場合があります。慣れないと気持ちの悪い光景ですが、漁師や魚屋などプロの業界では「寄生虫が多い魚ほどうまい」が定説。もちろん食べる際には寄生虫のリスク管理をしっかり行う必要がありますが、身のうまさは保証されている(虫に笑)といえるでしょう。
魚の処理方法
干物を作るにあたり、魚を下処理する必要があります。とはいっても難しいことはありません。魚の内臓を除去し、身を開くだけです。それでは実際に順を追ってやってみましょう。
エラを除去する
エラは、魚の顔の両側にそれぞれあります。頭型とアゴ側の骨と接続し、回りには薄い膜があります。実際にエラを見てみると一目瞭然。エラは煮ても焼いても食べられませんし、残しておくと腐敗を促進する可能性があるので、最初に除去します(エラも内臓の一部です)。
エラを外す際はまず、エラのわきにある薄い膜に切り込みを入れます。膜がつながったままだと、エラを骨から外してもうまくとれません。エラに沿うよう、包丁の先を使ってスーッと切ります。
頭側、アゴ側それぞれの接続部を包丁で切断し、片側のエラから包丁を突き刺すように入れ、奥のエラへと貫通させます。その状態で包丁をひねりながらエラを引っ掛けるようにして引き抜くと外れます。難しい場合は指を突っ込んでエラを引き抜いても構いません。ちゃんとエラと骨が外れていれば簡単です。
内臓を除去する
次は内臓を除去します。魚によっては内臓を食べることもできます。ほとんどの魚は胃と肝臓が食べられます。胃は開いてよく洗ってから軽く塩に漬けます。その後、水でよく洗ってから水気を拭き、湯通しして細く刻んでポン酢で食べたり鍋に入れたりすると美味。
肝臓は叩いて濾してから醤油と混ぜ、肝醤油にして刺身と合わせたり、鍋に入れたりするのが王道ですね。ただしフグ以外にも毒性のある肝臓を持つ魚もありますので、市場の人に聞くなどして食中毒事故をしっかり予防してください。
さて、魚の内臓を除去する際は、肛門から逆さ包丁で腹の皮一枚を切る要領で、肛門からカマ(胸ビレがある部分)まで刃を入れます。
腹を開いたら、内臓を傷つけないよう優しく取り出します。
内蔵を除去すると、その奥の中骨に沿って赤黒い肉がついているのが見えるはずです。これは血合肉といい、魚の運動を助ける筋肉です。たくさんの毛細血管が通っており、鉄分たっぷり栄養満点ですが、その分生臭い部位でもあります。焼いた血合いの味や食感が好きという方もいるでしょう。焼き魚にする分には問題ありませんが、今回は念のため除去しておきます(理由については次回「長期キャンプにオススメ!簡単にできる干物づくり②」内の「腐敗防止の極意」で詳しくお話しします。
血合いの取り除き方は、中骨(血合い)に沿って包丁で切り込みを2~3本入れて、あとはささらやスプーンなどでかき出すだけ。簡単にとれます。
内臓除去完了!
これでエラと内臓(ついでに血合いも)がきれいに取り除けました。最後に優しい流水で中をしっかり洗い、血をきれいに流します。キッチンペーパーなどで水気をよく拭いたら完成。
やってみると意外と簡単。包丁やナイフ1本あればどこでもできる作業なので、ぜひ挑戦してみてください。
次回はいよいよ魚を開いていきます。
-
前の記事
キャンプ飯の新境地!スキレット一つで作るアウトドアパスタ 2020.08.24
-
次の記事
長期キャンプにオススメ!簡単にできる干物づくり② 2020.08.25