【おうちで本格ベーコン作り⑥】いざ実践!おうちで燻製しよう

【おうちで本格ベーコン作り⑥】いざ実践!おうちで燻製しよう

おうちで本格ベーコンを作る当シリーズも、いよいよクライマックス。今回はついに燻煙作業を行います。

これまでベーコン作りで大切なことをお話ししてきました。特に安全と衛生の知識はとても重要ですので、ご覧になっていない方はぜひ基礎編からご覧ください。

【おうちで本格ベーコン作り①】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと

【おうちで本格ベーコン作り②】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと~後編~

そもそも燻製とは

燻製はさまざまな国の食文化として根付いていますが、いずれも煙に含まれる殺菌成分を利用し、保存性を高めた保存食です。日本では鰹節が伝統的な燻製食品です。

肉や魚を使用する場合、塩漬けにして水分を抜き煙と熱で保存性を高めるのが特徴ですが、実は燻製には大きく「熱燻(ねっくん)」「温燻(おんくん)」「冷燻(れいくん)」の三種類の方法があります。

熱燻

熱燻は80℃以上の高温で燻製を行う方法で、フライパンとガスコンロでサッと燻製する類がこれにあたります。お手軽に燻製を楽しめるのがメリットですが、時間をかけて食材の水分を抜き煙をしみ込ませるわけではないので、保存性はさほど高くありません。

温燻

今回、お手製の一斗缶(あるいはダンボール)燻製器を使って行うのが温燻です。30~60℃程度の温度で、数時間の時間をかけて行います。一般的に燻製といえばこの温燻を指すことが多く、ベーコンの一般的な作り方です。今回は6時間ほどかけて燻製します。

冷燻

15℃~の低温で燻製を行う方法で、特殊な設備が必要です。生ハムの製造などはこの方法で行われているものが多く、燻製時間も数週間と長期間に渡りじっくり燻製するのが特徴です。

いざ実践!燻製しよう

それではいよいよ燻製です。使用するものは以下の通りです。

  • 干し肉(食材)
  • 燻製器
  • スモークウッド&スモークチップ
  • バーナー

干し肉

干し肉の作り方については【おうちで本格ベーコン作り④】干し肉を作ろうをご覧ください。干し肉のほか、チーズやナッツなどお好みのものを一緒に燻製してもいいですよ。

燻製器

今回は自宅にあるものを活用し、お手軽燻製器を自作しました。詳しい作り方については【おうちで本格ベーコン作り⑤】燻製に必要なもの&準備をご覧ください。

スモークウッド&スモークチップ

今回はスモークウッドとスモークチップを併用します。香りに複雑さを持たせたいからです。どちらか一方だけでも構いませんが、スモークチップは火が消えやすいため、スモークウッドがオススメ。木の種類によって香りが異なるので、いろいろ試してお好みのものを見つけましょう。

茶葉や余った野菜・フルーツの切れ端などを干しておいたものなどを使うこともできます。自分だけのオリジナルの香り探しも燻製の面白さです。

バーナー

スモークウッドにしっかり着火するために使います。あれば便利ですが必須ではありません。

燻製器に肉を設置する

今回は一斗缶に針金を通し、肉を吊り下げられるよう燻製器を設計しました。千枚通しなどで肉に穴を開け、S字フックを通しておきます。穴を開ける箇所があまり端ですと肉が重さでちぎれてしまうので、ある程度の負荷に耐えられる位置に穴を開けてください。

すべての肉にS字フックを通したら、燻製器に取り付けます。次はスモークウッド&スモークチップに着火します。

スモークウッドに着火する

スモークウッドは、使う長さにより燻製時間を調整することができます。今回は6時間かけて燻製を行うので、6時間分の量を使います。市販品のパッケージにおおよその目安時間が記載されていますので、詳しくはそれぞれの商品説明をご確認ください。

スモークウッドが肉の真下にこないよう全体のレイアウトを考えたら準備完了了。

いよいよバーナーで着火しますが、ここで重要なポイントが「しっかり火をつけること」です。スモークウッドの端一面全体をじっくりと炙ってください。着火が甘いと、途中で火が消えてしまうおそれがあります。

スモークウッドにしっかり火がついたら、あとは燻製器を設置して完了です。このまま6時間、たまに火の調子を確認しながらまったりと燻製を楽しみましょう。

燻製途中にやること

燻製している間に、いくつかやっておきたい作業があります。それぞれ一時間に一回程度の割合で行うといいでしょう。

肉の汗を拭く

温燻していると次第に肉が汗をかいてくるので、定期的に拭き取りましょう。

肉の位置を変える

位置によって熱がまばらになりやすいため、定期的に肉の位置(あるいは熱源の位置)を変えましょう。

火の確認

火が消えていないかまめに確認しましょう。空気穴や燻製器の隙間などから漏れている煙の量で、火の状態を確認できます。もし火が消えてしまったら、再度バーナーでしっかり着火して燻製を再開してください。

自家製ベーコンついに完成!

6時間ほど燻製すれば、ついに自家製ベーコンの完成です。おいしそうな飴色になり、香ばしい燻製の香りがしています。燻製する時間は適宜調整してください。3時間程度で済ませてもかまいません。短時間ですと肉のジューシーさは失われませんが、保存性が低くなります。長時間ですとジューシーさは失われますがうま味が増し、保存性も高まります。

さて、燻製した肉をこのまますぐに食べても構いませんが、燻製したては煙のエグみが強くあまりおいしくありません。冷蔵庫で三日ほど寝かせるとエグみが和らぎ、おいしく楽しむことができます。もっとももどかしい三日間ですが、せっかく作ったのですから、ぜひ最高の状態を召し上がってくださいね。

次回はついにシリーズ最終回です。ベーコンの保存方法や調理方法などをご紹介します。

【おまけ】ピックル液と塩抜きについて

お気づきの方もいるかもしれませんが、当シリーズのベーコン作りでは「ピックル液」と「塩抜き」が登場しません。本項ではおまけとして、ピックル液と塩抜きについて少しお話しします。

ピックル液とは

ピックル液とは塩水のことです。当シリーズではベーコン作りの初期工程で肉を塩漬けにしていますが、肉を塩水に漬けて塩を回す方法もあります。このときに使用する塩水がピックル液で、一般的に5~30%の塩分濃度で使われています。

さらにピックル液にお好みのスパイスやハーブなどを混ぜたものを「ソミュール液」といいます。

ピックル液を使うメリットは、肉に塩が早く均等に回りやすいことです。塩分のコントロールがしやすいため、仕上がりの味に徹底的にこだわるなら有用です。

しかし脱水する力は塩漬けに劣ります。つまり保存性がやや落ちるということです。ソミュール液(あるいはピックル液)を使用して作ったベーコンは、そうでないものよりもカビや細菌が繁殖するリスクが高いため、当シリーズではできるだけ失敗のリスクを排除すべくピックル液は採用していません。

塩抜きとは

塩抜きとは、塩漬けした肉を水に浸けて塩を抜く作業です。塩は肉の表面から内部に向かって徐々に浸透していきます。つまり肉の外側の方が内側よりも塩辛くなるのです。塩が肉の芯に届く頃に、表面はかなり塩辛くなっています。そこで水に浸けて表面から塩を抜くことで、肉全体の塩分濃度を均一にするのです。

しかしこの作業は欧州であまり一般的ではありません。調理前に使う分のベーコンを塩抜きすることはあっても、ベーコンを製造する段階で塩抜きをするという話はあまり聞かないのです。保存食であるベーコンの保存性を低下させる工程は合理的でないからでしょう。

当シリーズで塩抜きを採用しなかったのも、「せっかく塩で水分を抜いた肉に再び水を与えないため」です。これまでお話ししてきたように、水分と保存性は密接です。塩抜きをすることでカビや腐敗のリスクが高まる可能性があることをご留意ください。