【おうちで本格ベーコン作り⑤】燻製に必要なもの&準備

【おうちで本格ベーコン作り⑤】燻製に必要なもの&準備

当シリーズでは、自宅できる本格的なベーコンの作り方を紹介しています。誰でも簡単に作れるのが魅力的な自家製ベーコン。今回からいよいよ燻製の工程へ入りますが、安全のため知っておくべきことについても詳しく解説していますので、まだご覧になっていない方はまずそちらからお読みください。

【おうちで本格ベーコン作り①】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと

【おうちで本格ベーコン作り②】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと~後編~

それではいよいよ燻製です。本項では燻製に必要なものと、簡単お手製燻製器の作り方を紹介します。

燻製に必要なもの

燻製に必要なものは以下の通りです。

  • スモークウッド(スモークチップ)
  • バーナー
  • 燻製器(今回は一斗缶で自作します。ダンボールでも代用できます)

基本的には上記だけです。あとは干し肉のほかチーズやナッツなど、お好みの食材をご用意ください。

スモークチップやスモークウッドは、ホームセンターなどで大体取り扱いがあるかと思います。今回は補助的にスモークチップも使いますが、基本的にはスモークウッドだけで問題ありません。

スモークチップとスモークウッド

スモークチップは文字通り木材をチップ状に加工してあるもので、火付きがよくさまざまな種類の木材をブレンドして自分だけの香りを作りやすいというメリットがあります。しかしうまく配置しないと燻煙の途中で火が消えてしまったり、十分な煙の量が得られなかったり(あるいは燃えすぎたり)しやすいためやや上級者向けです。今回は初心者にも扱いやすいよう、あくまで補助的に使用します。

スモークウッドは木材を粉末にしてからブロック状に加工したもので、一度火をつけると消えにくいというメリットがあります。また狙い通りの煙量を狙い通りの時間でコントロールしやすいのも大きなメリットといえるでしょう。ラインナップもそれなりにあるので初心者にオススメです。

バーナーの役割

バーナーはスモークウッドにしっかり着火するために使用しますが、必須アイテムではありません。

スモークウッドは一度着火すると消えにくいですが、しっかり着火しなければ消えてしまいます。ライターで軽く炙る程度では着火できない性質なのです。そのためバーナーで一面を焼き切るのですが、ガスコンロの火を使ったりたき火などの火で着火したりもできます。要は「しっかり着火できれば何でもいい」ということです。

燻製器

さて、本項のテーマ「燻製器」です。

写真は完成後のお手製燻製器です。肉をセットした燻製器を持ち上げ、下から撮影しています。燻製器内部に張った針金に、S字フックで肉をぶら下げています。

燻製器は燻製をするための道具で、市販されているものには食材を設置しやすいようレイアウトが工夫されていたり、温度計が内蔵されていたりするものがあります。

当シリーズのテーマはあくまで「自宅で簡単に本格ベーコン」ですので、自宅にあるものや手に入りやすいものなどを使い、DIYで簡易燻製器を作ります。今回は一斗缶を使用しますが、一斗缶が手に入らない場合はダンボールで代用することもできます。

燻製器を作る前に

まずはどのような形にするかを設計しなければなりませんが、構造は至ってシンプル。写真はフタを取り除いた一斗缶を真下から見たものです。作り方は、一斗缶に穴を開けて赤線部分に針金を通すだけ。赤色四角形に「ブロック」と書かれている位置に、スモークウッド&スモークチップを配置して燻製します。

スモークウッドの真上に肉がこないように配置する必要があります。理由は、燻製の熱により肉の脂が落ちると、スモークウッドの火により脂が発火する恐れがあるためです。そうなると肉は丸焦げになりせっかくの苦労が台無しになりますし、ダンボールを使って燻製器を作る場合、火事などの事故にもつながります。

スモークウッドの上に肉がこないよう、肉をぶら下げる針金をL字型に設計する──というわけです。

これは魚の燻製などを作る場合も同様です。食材の脂でボヤを起こさないよう「スモークウッドの上に食材を配置しない」というのを習慣にしましょう。

簡易燻製器の作り方

それではさっそく簡易燻製器を作っていきます。簡易燻製器を作るために必要な道具は以下の通りです。

  • 缶切り(缶詰などを開けるための一般的なもの)
  • ニードル
  • 針金
  • S字フック

缶切りは、一斗缶のフタを切り取るために使います。ニードルは一斗缶に穴を開けるためのもの。ドライバーセットのパーツに付属しているものでもいいですし、千枚通しなどでも構いません(一斗缶に穴が開けば何でもよい)。針金は肉をぶら下げるためのレールに、S字フックは肉をぶら下げるために使います。

一斗缶のフタ(上面)を切り出す

缶切りを使って、一斗缶のフタを切り取ります。完全に切り離してしまって構いません。

缶の切り口は鋭いので、手などを切らないよう十分注意してください。また一斗缶の中はよく洗浄しましょう。

針金の通し穴を開ける

針金を通すための穴を開けます。2本の針金を通すので、計4か所穴を開けることになります。

通した針金の先端は、写真のようにねじって固定します。ビスで固定しても構いませんし、見た目を気にする場合はボルトクリップなどを使っても構いません。針金がしっかり固定されればOK。

空気穴を開ける

一斗缶の上部(燻製器として設置した場合の上部。厳密には一斗缶の底面)に1ヵ所だけ空気穴を開けます。これを開けておかないと酸素が十分に供給されず、チップの火が消えやすくなります。不要な場合はセロテープでふさいでしまって構いません。ダンボールを使って燻製器を作る場合、空気穴は不要です。

完成

以上で簡易燻製器の完成です。あとは干し肉に穴を開けてS字フックを通し、燻製器の針金レールに引っ掛けて燻煙にかければ燻製のできあがり。

燻製にはさまざまな知恵とアイデアが詰まっていますが、実際に行う作業は単純そのものです。

ダンボール箱を代用する場合

簡易燻製器を一斗缶でなくダンボールを使って作る場合も、基本的には同じ要領です。

ダンボールの場合は空気穴が不要なのと、缶のような耐久性がないため食材の量によっては今回のような吊り下げ式ができません。その場合は焼き網などを使い、「網の上に食材を置くスタイル」にするなど適度調整してください。

またダンボールを使う場合は特に、脂の発火などによる火災に十分気をつけましょう。安全面を考慮すれば、ダンボールよりも一斗缶がオススメです。

簡易燻製器作りまとめ

それでは最後に、簡易燻製器作りの要点をまとめておさらいします。

重要なポイントは以下の1点だけです。

  • スモークウッドの真上に食材を配置しないよう設計する

今回は肉を干すためのレールをL字型にすることで対策しました。方法がどうあれ食材から落ちた脂が着火しているスモークウッドと干渉しなければどのような形でも構いません。

また地面に緩やかな傾斜がある場合も、地面に落ちた脂が傾斜に流れてスモークウッドに干渉しないよう、地面の形状にまで配慮する必要があります。いずれにせよこれは火災事故などを防ぎ安全に燻製を楽しむだけでなく、ここまで10日間近くも時間をかけていねいに手入れしてきた干し肉をムダにしないために必要な措置でもあります。

これまでご覧になってなりお気づきの方もいるかと思いますが、燻製には正しい知識や手順が必要ですが、やること自体は決して難しいことがなく非常にシンプルです。

次回はいよいよ燻煙作業に入ります。自家製ベーコン完成まであとわずか。ここまできたからには最高のベーコンを仕上げましょう!