【おうちで本格ベーコン作り④】干し肉を作ろう

【おうちで本格ベーコン作り④】干し肉を作ろう

前回は、自家製ベーコンを作るにあたり肉を塩漬けにしました。塩漬けは肉の水分(組織液)を排出し、保存性を高めるのが目的です。しかしそれだけでは十分でありません。この段階で燻製を行ってもまだ肉の保水量が多く、やがて細菌が繁殖したりカビが生えてしまったりする可能性が高いのです。

そこで次に行うのが「干す」こと。つまり「乾燥」です。

本項では肉を上手に干すためのポイントや注意点を解説します。

肉を干すために必要なもの

肉を干すのに最低限必要なのが「干し網」です。少なくとも干し網さえあれば何とかなります。

干し網は、魚屋さんの軒先で干物用に使われていたり、漁師さんが海産物を干すのに使っていたりするもので、肉や魚だけでなく野菜や果物、野草を干すのにも使える便利なアイテムです。

写真のようなオーソドックスなタイプは、日本で古くから使われているタイプで、よく魚の干物に利用されています。海外のアウトドア用品メーカーも「ハンギングドライネット」などといった商品名で同様の商品を販売しています。それぞれ形状は異なりますが役割は同じですので、お好みのものをご用意ください。

干し網の役割

干し網の役割は、虫を寄せ付けないことです。魚の干物などにもいえることですが、もし網に入れず干していると、ハエが干物に卵を産み付ける可能性があり衛生上よくありません。

ハエの卵はせいぜい1mm程度の大きさなので目視しにくいこともありますが、何よりもハエの卵は早ければ1日で孵化してしまうのが注意しなければならないところ。つまり肉に卵を産みつけられてしまうと、条件によって翌日に蛆虫まみれになってしまう可能性もないわけではないのです。

こうした悲惨な状況を避けるために、網かごは自家製ベーコン作りの必須アイテムといえるでしょう。

もちろんハエだけでなく、蚊やその他の虫全般があらゆる細菌やウィルスの媒体になりますので油断は禁物です。

竹ざるの役割

肉を設置するために使います。竹は抗菌性が高く湿度にも強いのでオススメです。

干し網に直接肉を乗せてもいいですが、干し網の掃除は意外と大変な作業なので、竹ざるなどを利用するのがいいでしょう。

干し網に直接触れなければ金属製の網やバットなどでもいいですが、通気性には十分注意してください。バットを使用する場合、肉とバットの接触部分に水が溜まり腐敗しやすくなるため、ひんぱんに肉をひっくり返す必要があります。こうした手間やリスクを避けるのに、湿度に強く通気性のいい竹ざるが理想的なのです。

竹ざるを使用する際も、一日に一回は肉をひっくり返してくださいね。

竹ざるがない場合は、アルミホイルをくしゃくしゃに丸めてから軽く伸ばしたものなどでも代用できます。とにかく好通気性が条件。できるだけ肉の全面が空気に触れるようにしましょう。

肉を干す

3日間塩漬けにした肉を袋から取り出し、キッチンペーパーなどで表面の水気を拭き取ってから干します。岩塩の発色効果で、肉が鮮やかに発色しているのがわかります。海塩で作った場合はくすんだような色になり、こうはなりません。

さていよいよ肉を干しますが、肉を干すにあたりいくつか気をつけなければならないポイントがあります。

1.風通しのいい日陰に干すこと

肉を干すときは、直射日光にあてないでください。紫外線には殺菌作用がありますから、「天日干しにした方がいいだろう」と考える人もいるかもしれません。ですが直射日光にあたると肉の温度が急激に高まり、あっという間に細菌が繁殖するのに最適な環境ができあがってしまいます。早ければ1時間とたたないうちに腐敗臭を放つでしょう。

肉を干すのは風通しのいい日陰。もちろん湿度が高い場所や空気が滞留しているような場所も避けなければなりません。

屋内の場合、普段使用されていないカビ臭い部屋や物置きなどもできるだけ避けましょう。カビ臭い場所には大体カビの菌糸がたくさん存在しています。肉に付着するとカビやすくなってしまうのです。

2.夜は屋内に入れる

夜間、干し肉を屋内に入れる理由は、夜露で肉が湿ってしまうのを防ぐためです。

夜露は、日中の温度が高く夜間の温度が急激に冷めるような環境でとりわけ多く発生しますが、発生条件の有無を問わず夜間は干し肉を屋内に入れた方がいいでしょう。夜間の天候の変化にはなかなか対応できないからです。

安眠を妨げない程度のささやかな霧雨も、乾燥を目的とする干し肉には致命傷になりかねません。

干す時間と注意点

肉は3日~1週間程度干します。天気のいい日は風通しのいい日陰に、雨や曇り、雪の日など天候が優れない日は屋内のできるだけ風通しのいいところ、あるいは冷蔵庫でやり過ごしてください。

さて、どうやって肉を干す期間を決めるかですが、単純に「保存性を高めたければ長時間、食感を優先させる(すぐに食べるの)なら短時間」と考えていただいて構いません。

これまでお話しした通り、「干す」作業は肉の保存性を高めるために行います。短時間干しと長時間干しにはそれぞれメリットとデメリットがあるので、お好みで折り合い点を見つけてください。

短時間干しのメリットとデメリット

3日間程度の短時間干しのメリットは、肉の柔らかい食感が維持されることです。つまりジューシーな食感を味わいやすいということ。肉の保水量がまだ多いので、日本人好みのしっとりとした食感を楽しみたい場合に向いています。

一方、一般的な生肉よりも保存性が高いですが長時間干した肉よりも保水量が多い分腐敗しやすいため、できるだけ早く消費する必要があります。

長時間干しのメリットとデメリット

3日間以上の長時間干した肉のメリットは、保存性が高いということです。長ければ半年~1年以上も保存できます。また料理の出汁として使えるほど、肉のうま味が凝縮されるというメリットもあります。

一方、水分が少ない分食感は硬めで、調理に少しコツがいります。干し時間が長ければ長いほど保存性が高まりますが、調理での使いやすさは失われていきます。

また水分が抜けた分、塩分が濃縮され濃度が高まるため、塩辛くなりやすいのも特徴です。

保存性と食味を両立するコツ

ベーコンを作ってすぐに食べるならあまり細かいことを考える必要はありませんが、せっかくなら本場のやり方を継ぎ、保存性が高く味もいいものを作りたいですよね。

長時間干して作るベーコンは食感が失われがちですが、調理直前に水やブイヨン、ワインなどの液体に浸すことで補うことができます。スープや煮込み料理などに使うのでしたら気にせずそのまま使って構いません。鰹節や昆布、干し椎茸の要領でいつでもおいしいベーコンを楽しめるのでオススメです。

干し肉まとめ

最後に肉を干す際の要点をおさらいしましょう。

  • 干し網と竹ざるを使う
  • 肉は最低でも1日1回ひっくり返す
  • 風通しのいい日陰に干す
  • 夜間は屋内に入れる
  • カビ臭い場所や通気性の悪い場所を避ける
  • 目的に応じて干し時間を調整する

以上が肉を干す際に重要な点です。

次回はいよいよ燻製の工程へと進みます。一斗缶を使った簡易燻製器の作り方をご紹介します。ダンボールでも応用できるテクニックですので、どなたでも自宅で簡単に本格的な燻製を楽しめますよ。