【おうちで本格ベーコン作り③】下準備と肉の塩漬け

「西洋のかつお節」といわれるベーコンには、格別のうま味と風味があります。市販のベーコンでは決して味わえないピュアなおいしさは、まさに自家製ならでは。
おいしいだけでなく、ゆったりと燻製を楽しむ優雅な時間も自家製ベーコンの魅力の一つです。
しかし衛生面における正しい知識がないと、優雅な時間が一転して生命にかかわる重大な事故につながってしまうかもしれません。事故を防ぐために最低限必要な知識を「ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと」と題し、前編と後編にわけてこれまでお話ししてきました。
いよいよベーコン作りを実践していきますが、まずは予備知識をしっかりと備えてのぞんでください。以下はベーコン作り初心者も上級者も必読です。
【おうちで本格ベーコン作り①】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと
【おうちで本格ベーコン作り②】ベーコンを作る前に知っておくべき大切なこと~後編~
それでは今回から、いよいよ自家製ベーコン作りを実践していきます。せっかくなので5kgの豚肉を使って大胆に作っていきましょう。この量があれば、一般家庭でしたら半年ほどはベーコンに困りません。
自家製ベーコン作りの手順
まずは自家製ベーコンを作る全工程をざっと頭に入れておきましょう。
- 肉を塩漬けにする
- 干し肉を作る
- 燻製する
- 保存する
大きく分けると、ベーコン作りは上記1~4の手順に分けられます。
こう見ると実にシンプルな工程ですが、このすべてを行うのに10日ほどかけるので、手間はかからずとも時間はかかります。
とはいえ決して難しい作業ではないので、構えることはありません。衛生面さえしっかりと意識しておけば、あとは自由な世界なのです。やがては自分の好みの味、香り、食感、保存性など自在にコントロールできるようになるでしょう。そうなればもう自家製ベーコンは、食卓に欠かせない文化としてあなたの家庭に根付くに違いありません。
それでは各工程についてまずは簡単に解説します。
1.肉を塩漬けにする

塩の浸透圧を利用して、肉から水分を抜きます。この工程に1~3日ほどかけます。
浸透圧というのは物理現象の一つで、簡単に言うと「肉に塩を塗ると、塩が肉に入っていくと同時に肉の水分が外に抜ける現象」です。塩水でこれを行うこともできます。塩水を使う場合、塩を直接肉に塗るよりも全体に塩が早く均等に回りやすいという特徴があります。この方法は干し肉を作るほか魚の干物を作る際にも利用されています。
今回は諸事情により(別項にて解説)肉を直接塩に漬ける方法を採用します。方法は至って簡単、文字通り肉を塩に漬ける(塗りたくる)だけ。塩の量や塗り方など詳細については本編で詳しく解説します。まずは「最初に塩漬けする」ということだけ頭に入れておいてください。
2.干し肉を作る

塩漬けにすると、肉から多くの水分が抜けます。これにより肉は腐敗しにくくなり保存性が増しますが、まだ十分とはいえません。そこで塩漬けした後は肉を干し乾燥させます。この工程に3日~1週間程度の時間をかけます。
本編では肉を干すのに適した環境条件や、干し網などがない場合の代替方法などについて解説します。
3.燻製する
肉を燻煙にかけて燻製します。今回は「簡単・お手製燻製器」をDIYで自作して使います。もちろん簡単・お手製燻製器の作り方もご紹介します。
また燻製方法とともに燻製時の注意点なども本編でご紹介します。本編をご覧いただけば、初めて自家製ベーコンに挑戦する方も失敗知らずでおいしいベーコンを自作できるはずです。
4.保存する

完成したベーコンは保存しなければなりません。保存時に気をつけなければならないポイントや、さまざまな保存法のメリットとデメリットなどについて解説します。
いよいよ実践!肉を塩漬けにしよう

それではいよいよ自家製ベーコン作りを始めます。最初の「塩漬け」で用意するものは以下の通りです。
- 豚バラブロック
- 岩塩
- 肉を入れるためのポリ袋など
- お好みのハーブ&スパイス
今回は5kgほどもある豚バラブロックを使いますが、もちろんスーパーなどに売っている300~400g程度のものでもかまいません。
一般的に肉に対する塩の適正な量は2%~5%程度といわれることが多いようですが、10%以上の塩を使用するケースもあり、用途や目的により使う塩の量が変わります。塩には防腐作用があるため、塩の量が多くなればなるほど保存性が高まります。
当シリーズでは「料理の使いやすさと保存性を両立する本格ベーコン」を目指したいので、塩を多めに使います。
使用する塩の量
今回は200g程度の岩塩を使用します。肉が約5kgですから、およそ4%の塩ということになります。この程度の塩分ですと、料理をするときにそのままベーコンを使っても味にほとんど触りません。使い勝手のいい分量です。
塩の量についてはあまり神経質になることはありません。とりあえず肉全体へ十分に行きわたる程度の量をご用意ください。塩が多い分にはかまいませんが、少ないと保存性が悪くなる(腐りやすくなる)のでその点だけ気をつけましょう。
塩漬け時の注意点①~手袋をする~

人の手には、目に見えない細菌が思いのほかたくさん付着しています。どうやら石鹸でしっかり洗っても限界があるようで、素手で触れた肉はそうでない肉よりも腐敗が早く進んでしまうのです。人の手の皮脂や水分なども腐敗を促進する原因になります。ですから肉に塩を塗る際はビニール手袋などを使用し、素手で直接肉に触れないようにしてください。
塩漬け時の注意点②~ヒダ部分にもしっかり塩をする~

肉の切れ端には写真のように、ヒダ状になっている部分があります。このヒダ部分は細菌が繁殖しやすいため、念入りに塩をすり込みましょう。
使用するハーブ&スパイス
今回はシンプルにブラックペッパーのみ使います。ハーブ&スパイスには香りづけのほか肉の臭み消し(マスキング)の役割がありますが、基本的にお好みですのでお好きなものをお使いください。
ベーコンに使われる代表的なスパイスは以下の通りです。
- ペッパー類
- ローズマリー
- タイム
- クローブ
- コリアンダーシード
- ローリエ
- セージ
- ナツメグ
- シナモンなど
塩とハーブ&スパイスを塗って寝かせる

肉全体に塩とハーブ&スパイスをすり込むように塗ったらポリ袋などに入れ、そのまま冷蔵で3日ほど保存します。今回は大きめのブロック肉なので、1日寝かせた後に出てきた水分を捨て、600g程度に切り分けてからもう一度塩を塗りなおします。
1kg以内の小さめなブロックの場合、塩を塗りなおす必要はありません。

こちらの写真が、塩を塗ってから3時間ほど経過したものです。たった3時間でこれだけのドリップが出ます。
ドリップは赤い色をしているので一見すると血液のように見えますが、実はこれはミオグロビンという色素たんぱく質で、組織液とも呼ばれます。有害なものではなくむしろ食品のうま味や栄養のもとなのですが、細菌はこの水分を好むため保存食作りではできるだけ排出します。
またドリップは放置しておくと臭みのもとにもなるので、肉が長時間ドリップに浸かっている状態は望ましくありません。
さて、塩漬けにしてから1日が経過しました。ドリップの量を見てみましょう。

ご覧の通り、およそ150mlもの量のドリップが出てきました。塩の浸透圧がよくはたらいている証拠です。
一度このドリップを捨て、キッチンペーパーで肉全体の水気を拭いてから切り分けます。それから塩をし直して新しい袋に入れ、残り2日を冷蔵庫で寝かせます。
3日もの時間を要しますが、実際にやることは「肉に塩とハーブ&スパイスを塗る」だけです。作業は至ってシンプル。これで自家製ベーコン作りの第1ステップは完了です。
塩漬けまとめ
最後に自家製ベーコン作りファーストステップの「塩漬け」をおさらいしましょう。ポイントは以下の通りです。
- 岩塩を使うこと
- 肉を素手で触らないこと
- 全体に十分行き渡る程度の塩を使うこと
- ドリップが多い場合は途中で捨てること
- お好きなハーブ&スパイスを使ってよい
3日程度塩漬けにし、ドリップが十分に出きったら塩漬けの工程は完了です。最後にキッチンペーパーなどで肉の表面の水分をしっかり拭いて、次の工程「干し肉作り」へと進みます。
次回は干し肉の作り方と注意点について解説します。
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