長期キャンプにオススメ!簡単にできる干物づくり③
長期キャンプで簡単にできる干物づくりシリーズ、今回でいよいよ最終回です。
釣った魚をその場で処理して干物に──なんてことがスマートにできたら周りから羨望の眼差しで見られること間違いなし。
前々回は魚の目利きや内臓の処理、前回は魚の開き方についてお話ししました。まだご覧になっていない方はまずそちらからご覧ください。
今回はいよいよ、開いた魚を塩漬けにして干していきます。
それではさっそく実践していきましょう。
塩漬けにする
まずは開いた魚を塩漬けにします。今回は厳密にいうと「塩水漬け」です。問題は塩分濃度ですが、開いた魚の重量に対して3~5%の海塩を使うのがオススメです。
塩分濃度はその人のやり方や好み、目的、魚の状態や環境などにより変わります。一般的には1~10%程度が多いですが、10%の塩分ともなると塩辛く感じる方が多いはず。大体海水と同程度の3%くらいがオススメですが、ここで注意したいのが「味を優先させるか、それとも保存性を優先させるか」ということです。
塩分と保存性の関係
塩には防腐効果があります。つまり塩が多くなると、塩辛くなる代わりに保存性が高くなるということ。逆にいえば塩が少ないと食べやすい分、保存性が悪くなるということでもあります。
干物はもともと保存食ですから、魚の保存という目的のためには塩分濃度を高め、食べる直前に塩抜きをしてからあるいはそのまま焼く──というのが、いわゆる昔ながらのオーソドックスなやり方でしょう。
しかし塩抜きなどの手間をかけたくない場合は、あらかじめ塩分濃度を落としておいて冷凍保存してしまう──というのも一つの手段です。どちらの方法を採用するかは、各々お好みやご都合で決めてください。
今回は塩分3%でやっていきます。
ちなみに私は普段、塩水ではなく塩をそのまま魚に振りかけて塩漬けにします。塩の量も目分量で、大体全体に行き渡る程度の量。濃度にして3%程度を狙うくらいの気持ちです。多少味がブレても食べられないということはありませんし、アウトドアではむしろこちらの方法の方が現実的でしょう。あまり細かいことにこだわらずとも、慣れてくると感覚でできてしまいます。
塩漬けの注意点
魚全体が塩水に浸るようにする必要がありますが、魚が大きすぎて適当な大きさのバットがなかったりボウルに入らなかったりする場合は、オーブンの天板に塩水を入れて、魚の上からキッチンペーパーなどをかぶせる方法がオススメです。
あるいはチャックつきの大きな保存袋などに塩水と魚を入れ、空気を抜いて置いておくのもいいでしょう。
一時間も魚を浸けておけば十分です。浸透圧により魚の水分が外に出るので、塩水は生臭くなっているはずです。
魚を干す
魚の身を流水でざっと洗います。あまりていねいに洗う必要はありません。洗ったあとは水気をよく拭きます。これで塩漬けの工程が完了。
次はいよいよ魚を干します。
魚を干す際は干し網を使用します。干し網に魚を直接置くとあとで掃除が大変なので、写真のような竹ざるなどを使うといいでしょう。バットなど通気性の悪いものはオススメしません。魚の水分がバットの角や魚との接触面に溜まり、細菌が繁殖しやすくなるためです。
干し網は保存食づくりで何かと重宝します。自家製ベーコンづくりでも活躍しているので、併せてご覧ください。一度自家製ベーコンの味を覚えてしまうと、もう市販品には戻れませんよ。
干す際の注意点
さて、魚を干す際にはいくつか気をつけたいポイントがあります。それは「陰干しにすること」と「風通しのいい場所を選ぶこと」、そして「夜は屋内に入れること」です。
陰干しにする
「魚を干す」というと「天日干し」をイメージする方もいるかもしれませんが、天日干しにはしません。なぜなら直射日光に直接あてると魚の温度が上がり、細菌が繁殖しやすくなるためです。
魚を干す際は日陰を選んでください。
風通しのいい場所を選ぶ
風通しのいい場所を選ぶことも重要です。
空気が滞留したような場所ですと乾燥がうまく進まず、やはり細菌の繁殖を許してしまう可能性があります。またそうした場所ではカビのリスクもあります。いくら日陰でも、ずっと使われていないカビ臭い部屋や小屋の中などは、干物づくりに適していません。
夜は屋内に入れる
よく「一夜干し」という言葉を目にします。ホッケの一夜干し、イカの一夜干しなどが有名ですね。一夜干しという字から「一晩干したもの」と解釈してしまいそうなところですが、実は一夜干しというのは「一晩干した」わけではなく、「一晩程度の長さ(時間)干した」という意味です。つまり6~8時間程度のごく短時間だけ干したもの──という認識でいいでしょう。
実際に魚を干す場合、夜は魚を屋内に取り込まなければなりません。なぜなら、夜露によって魚が湿気を帯び、細菌が繁殖しやすくなる可能性があるからです。寒暖の差が激しいロケーションならなおさら気をつけなければなりません。せっかく腐敗と勝負するため水分を飛ばしているのに、夜露によって魚が濡れてしまっては元も子もないのですから。
陽が傾くころには魚を屋内あるいはテントの中などに取り込みましょう。
一般的な干し時間
魚が乾燥したら干物の完成です。
干す期間はお好みや用途でそれぞれ決めてください。すぐに食べるなら一夜干しで構いませんし、すぐに食べない場合でも冷凍しておけば保存がききます。
常温で保存したい場合は5日程度干すのがいいでしょう。ただし水分が抜ければ抜けるほど保存性や旨みが増す一方、ジューシーさが失われ身がパサつきやすくなります。
保存性をとるか、それとも食味をとるか。ご自分の中でちょうどいいバランスを見つけてください。
ちなみに私は3日程度干すことが多いです。
キャンプ滞在中の干物づくり
自宅で魚の干物を作る場合、一夜干しにして冷凍──なんてこともできますが、キャンプ中ではそうもいきません。冷凍庫があるわけではありませんし、夜間は魚を屋内に入れたくてもそうはいかない場合もあるでしょう。
キャンプなどアウトドアで干物づくりを楽しむ場合、環境の制限などさまざまな条件に対応しなければなりません。臨機応変な判断が求められます。
たとえば天気のいい日に魚の両面が指にくっつかないくらいまで乾かし、それから天日干しで一気に乾燥させるという技もあります。魚からある程度水分が抜けて腐敗しにくい状態であれば、天日干しにすることもできるのです。これは天候を読めない自然活動の中で、いかに魚を素早く乾燥させるかが問われる状況に有効です。
あるいはなかなか天候に恵まれない場合は、表面だけ乾燥させてあとは燻製にしてしまうのも一つの方法でしょう。
こうした対応力は経験値があってこそ生まれるものですから、まずは練習がてらご自宅で干物を作ってみてください。菌との付き合い方がわかってくれば、その知識をさまざまな保存食づくりに役立てられます。
さいごに~おさらい~
魚の干物づくりで大切なポイントを以下にまとめました。
- 血や体液など水気をよく拭き取る
- 塩の浸透圧を利用して魚の水分を抜く
- 風通しのいい日陰に干す
- 夜は屋内に取り込む
どういう状況であれ干物づくりの肝は、手順やセオリーでなくただ一つ「腐敗を避ける」という一点に尽きます。つまり細菌が繁殖する条件を逐一つぶしていけば、自ずと干物完成への道が開かれるということなのです。
学ぶととても深いですが、実践にそれほど難しい技術が求められないのが干物づくりのおもしろいところ。日常だけでなく、アウトドアでも干物づくりを手軽に楽しみましょう。
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