火おこしの達人になろう~火おこしの極意~

火おこしの達人になろう~火おこしの極意~

キャンプといえばバーベキュー。バーベキューといえば火おこし。アウトドアを楽しむにあたり、火おこし作業を行う機会は実に多いものです。

「火をおこす」という行為はどこか神聖で、人間本来の生命力を目覚めさせてくれるような感覚があります。それは食事という生命活動に直結するからなのか、あるいは揺らめく炎に動物としての遺伝子が呼応しているのか。理由はわかりませんが、とくに目的もなくただ火おこし作業を楽しむのが趣味──というアウトドアマンも少なくないはず。

バーベキューでの火おこしといえばもっぱら男性の仕事というイメージがあります。お気に入りの道具を用いてスマートに火をおこせると、それだけで周囲から尊敬の眼差しが注がれます。火おこしで手間取っている姿はできればあまり見せたくありませんよね。

しかしアウドトアにはトラブルがつきもの。たとえば「着火剤を忘れてきちゃった!」なんてトラブルは、誰でも一度や二度経験あるのではないでしょうか。

今回は、そんな時でも自力で簡単に火をおこす方法を紹介するとともに、「火おこしのメカニズム」についてお話しします。

火はなぜつくのか

固形状あるいは液体状着火剤などがあれば、火おこしは訳ありません。しかし着火剤は、キャンプ道具の中でもなぜか「比較的忘れられやすい道具」かと思います。

着火剤がないとたちまち前後不覚に陥るのでは、アウトドアマンとして少し情けない気持ちになってしまいますよね。どうせならそんな状況にも動揺せず対応し、事なきを得たいものです。

さて、そもそも火はなぜつくのでしょう?この原理を理解することで、火おこし作業をスムーズに行うことができるようになります。

たとえば着火剤とライター、そして木炭があれば火をおこせるのは、おそらく誰でもイメージできるはず。しかしむやみやたらに炭を並べ、着火剤を適当に配置して火をつけるだけではうまく炭に火を移らせることはできません。その理由を一つひとつ見ていきましょう。

火をおこすのに必要な条件

火をおこすには、絶対的に必要な条件が三つあります。一つは「燃料」、二つ目は「酸素」、そして最後は「点火源」です。

燃料

「燃料」というのは、この場合でいうと着火剤あるいは木炭です。ライターで簡単に着火できる着火剤にまずは火をつけ、そこから木炭に火を移していくのが効率的なやり方です。ライターで直接木炭に火をつけることも不可能ではありませんが、ガス消費量やそれにかかる時間などを思えば、コストパフォーマンスが悪いですよね。

これは備長炭など密度が高く着火しにくい木炭に火を移す際と同じ理屈です。密度が低く火がつきやすい(その代わり燃え尽きるのも早い)木炭にまずは火をつけ、それから密度の高い木炭に火を移していく──

こうして段階的に燃料をコントロールしていくことで、炎の質や持続時間をコントロールできます。

酸素

「酸素」は文字通り酸素、つまり空気のことです。炎は空気がなければ存在できません。子どものころ、学校の授業などで酸素と炎の実験を実習したことがある人は多いはず。試験管の口を下にして縦に持ち、火をつけたマッチをその中に入れると火が消える。試験管の中にある空気だけでは十分な酸素が供給されないため、火は消えてしまいます。火は酸素を消費してこそ燃え続けられるということです。

木炭に火をつける際にうちわなどで仰ぐのも、うちわで酸素をたくさん送って燃焼効率をよくするためです。うちわで仰ぐと風圧で火が消えてしまいそうなものですが、実際は酸素がたくさん送られているので火力が増します。うちわで仰ぐ力が強ければ強いほど、供給される酸素量も多くなり火力が大きくなります。覚えておいてくださいね。

点火源

点火源というのは、火の元のことです。この場合、ライターが点火源ということになります。

いくら燃料と酸素がたくさんあっても、点火源がなければ火はおこりません。典型的にはガスコンロです。ガスの元栓をあけるだけでは火がつきません。燃料も酸素も十分にあるのに点火源がないからです。そこでつまみを回してカチッと火花を散らし、その火花を点火源としてようやくコンロに火がつきます。

またガスコンロの火がなぜボンベの方へと逆流しないのか、疑問に思ったことはありませんか?この答えも「燃料」「酸素」「点火源」にあります。ガス管の中には燃料が十分にありますが、酸素がないために火が逆流できないのです。

新聞だけで作れる即席着火剤

キャンプなどでもし着火剤を忘れてしまったら……。前項の「燃料」「酸素」「点火源」の原理をベースに機転を利かせれば、雨天でもない限り何とか対応はできます。しかしもし手元に新聞紙があったなら、それはとてもラッキー。即席着火剤を作ってしまいましょう。

新聞紙で作るこの即席着火剤は、新聞をきつく絞るようにねじりながら円状に成型して作ります。ギュッと絞らないとすぐに燃えつきて灰になってしまいますが、きつく絞って作るとまるで木炭のように、じわじわと燃焼して木炭への着火を容易にしてくれます。

作り方はとても簡単です。

①新聞紙を広げる

まずは新聞紙を一枚広げます。

②新聞紙をたたむ

新聞紙を半分にたたみます。折り目が正確である必要はありません。大体でいいです。

③新聞紙を丸める

新聞紙で棒を作るようなイメージで、くしゃくしゃっときつく丸めます。雑巾を絞るようにギュッとねじりながら丸めましょう。

④輪を作る

丸めた新聞紙で写真のように輪を作ります。

⑤先端を輪に巻き付ける

両先端を輪の内側を通しながらどんどん巻き付けていきます。できるだけきつく巻き付けましょう。

⑥完成

全体に巻ついたら完成です。火をおこすだけなら、これが三つほどあれば十分。できるだけ早く火をおこしたければ木炭の量に見合うできるだけたくさんの数を作るといいでしょう。

使い方

即席着火剤の使い方は簡単です。バーベキューコンロなどに直接置き、その上に木炭を配置してライターなどで着火剤に着火するだけ。あとは放っておくだけで即席着火剤が仕事をしてくれます。

ただし、即席着火剤や木炭をやみくもに置くだけではいけません。重要なのは「酸素がしっかり供給されること」と、ホットスポットをしっかり作るということです。もっとも効率的なのは、即席着火剤を置いたらその周りに木炭を三角屋根のように配置するやり方。

この方法ですと適度に酸素が供給されるだけでなく、三角の中心部に熱が溜まりやすくホットスポットを作りやすいのです。中心部の温度が高くなればなるほど、スピーディに火をおこせます。

ここに木炭を追加するのは、すでに置いてある木炭にしっかり着火してから。中途半端な段階で焦って木炭を足し過ぎると、酸素が十分に供給されず火が消えてしまう可能性があります。「燃料」「酸素」「点火源」の原則を忘れないでくださいね。

もし火の勢いが落ちてきたら、うちわなどで仰いでください。遠慮せず豪快に仰いであげれば、火はすぐに復活してくれます。

最後に

火おこしはアウトドアの醍醐味の一つです。寒い場所で暖をとったりコーヒーを淹れたり。もちろん料理をするのにも火は欠かせません。キャンプ地へついて最初に火をおこしたときのえもいわれぬ喜びと安心感。火は人の心を豊かにします。

アウトドアに便利なツールやガジェットはたくさんありますが、便利な道具を使わずシンプルに火をおこすスキルを養っておいて損はありませんよ。